世界の財団とアートコレクション
東京国立近代美術館で開催中の
『現代アートのハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより』に、行ってきました。
Man Ray、Andy Warhol、Gerhard Richter、Francis Bacon、Maurizio Cattelan...と(羅列すると時代も作風もごちゃまぜですが)、かなり大物アーティスト達の作品が...!
これだけの作品が一気に鑑賞できるだけでも、一見の価値ありです。
※ヤゲオ財団は、台湾大手の電子部品メーカー、ヤゲオ・コーポレーションのCEOピエール・チェンさん、その家族およびコーポレーションからの寄付金によって創立された非営利組織。
そのコレクションは今や世界トップ10に入ると言われており、西洋・東洋(特に中国)交えた美術作品を持っている事が、そのコレクションをユニークにしていると言われています。
本展覧会では、全体で約40作家、75点の作品が展示中。(展覧会HPより)
展示構成は、現代美術をあまり知らない来訪者向けにも
「”コレクターの所蔵作品”を展示する」という事を、わかりやすく解説していく仕組みになっています。
現実のアートの世界で起こっている事を絡めながら、丁寧に組み立てており
最初の解説で「寿司のネタ」を例に、アートの市場価値やそれを取り巻く環境について論じているのが上手で
個人的には面白い問いかけ文句だな〜と感じました。
本展では、現代美術の作品は「世界の宝」とし、
その理由を『市場価値』(オークションでは、実際数十億円単位の金額がつきます)、『美術史的な意味』の2点でまとめています。
日本では、今まであまりコレクターとのコネクションが無かったり、採算性の問題から
この様な財団コレクションの展示はあまりできなかったとの事。
コレクションだけで、”美術史の連続性を表現することに挑む”なんて、改めて、相当な作品群ですね!!!
世界でアートのコレクションを持つ財団(有名なのは、カルティエ、日本だとポーラ・サントリー等の企業)と、そのコレクション規模・一覧・特徴がわかる記事等NET上で探したのですが、見つからず...。(いつか調べてみたい♪
)
日本では、企業の社長や役員が
アート作品を巧みにビジネスの会話に利用したり、オフィスに展示して楽しんだり...といった文化が、あまり根付いていませんが、例えば損保ジャパンがゴッホの「ひまわり」(約58億で落札したと言われており、その落札額に対して賛否両論はある)で、外国人クライアントの心をぐっと掴む様に
日本にも、アートとビジネスが、もっと根深く結びついていく文化ができていくと、嬉しいな。
しかしこれも、財団を持てる程に成長させた企業・ビジネスが無ければ成り立たなかった事。
恐れ多いですが、いつかそれ程までに成長できる様、ビジネスもを頑張らないと、と思いました。
美術のキュレーションと、情報のキュレーション
最近、Webの「キュレーションメディア」が流行っていますね。
「Gunosy」、「NewsPicks」、「NAVERまとめ」…
その他にも、食やインテリア、女性向けに特化したメディア等もあり、その市場は今
2014年には178億6000万、といわれる程に伸びているらしいです。(引用:Internet watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20140704_656589.html
正直、美術業界に関わった者としては
NAVERまとめも「キュレーター」とかっこよく称しているけど
ただまとめているだけ!だし、題名だけキャッチーで中身がくだらない記事も多いし、宣伝の要素も強いし
これを「キュレーション」と呼んで欲しくないなー、というのが、最初の感想でした。
2011年に佐々木俊尚さんの、『キュレーションの時代「つながり」の情報革命が始まる』が巷で噂になった時も、IT業界で何が起こるのかあまりピンと来ていませんでした。
キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
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今ではすっかり、キュレーションメディアから配信されるニュースを
楽しみに読んでいます... 笑
私が「キュレーション」という言葉、「キュレーター」という職種を知ったのは
8-9年前、美術業界で働きたいな~と漠然と考えていた頃。
”美術館”という空間に縛られずに、インディペンドで展覧会を企画したり、プロジェクトを担うのってどういう人達なのかなぁ、と調べていたら
「キュレーター」と呼ばれる、れっきとした職業があるのを知りました。
私が留学をした、ロンドンのGoldsmiths大学にもMFA in Curating(修士:キュレーションコース)というのがあり、世界中から将来の美術界・大物キュレーターを目指す若手が集まってきます。(ちなみに私は、Goldsmiths大学ではDiplomaコース、Contemporary Art Historyを修得しました。)
Royal College of Art、というロンドンにあるアートの名門校では
キュレーションコースを受講する為には、年間数百万(イギリス人以外)も支払い、修士2年目はほぼ自力で論文やプロジェクトをこなすという内容であるからにも関わらず、大変人気があります。
美術業界で「キュレーター」になる、という事は、美術史や作品の知識から、展示の企画、執筆、空間の構成、資金調達保存やアーティストとの交流まで、幅広く、知力共に手腕の問われる職に就く事です。
Goldsmithsのキュレーティングコースを卒業した友達は、大体母国へ返って、自分でプロジェクトを立ち上げています。
ビジネスのMBAと同じく「勉強して、で、何ができるの?」と問われる世界で
専門知識のみならず、総合的なプロデュース力までが必要とされる
高度な専門職だと思っています。
美術のキュレーションは、「物」と人間、空間との関わり合いや
音、におい、緊張感といった人間の五感に訴える3次元の世界まで組み立てるのに対し、
情報のキュレーションは、大量の情報を一定の基準で交通整理し
”集約による時間の短縮”、”他者との共有”、という現代のニーズを満たす
全く新しいものになっている気がしています。
現に、矢野経済研究所では、キュレーションサービスを下記の様に定義している様です。
「キュレーションサービスとは、目的や意図を持って情報収集して、そこから不要なものを切り捨てて、人々の関心・興味を新たに喚起する形式で、情報を集約化し他者と共有するサービスをさす。」
http://www.yano.co.jp/press/press.php/001264
もちろん、美術業界でも誰でも「キュレーター」を名乗れます。
ただ、ある意味、誰もが色んな切り口で「キュレーター」を名乗る様になった今...
やはりその中でも、「意義のある文脈をきちんと造りだせる」ものが
長く支持され、残っていくのかな、と何となく思っています。
はじめまして
ブログ、始めてみました。
5-6年前に現代アートについての歴史・理論をロンドンの大学院(UCL MA History of Art)で学び、東京のギャラリーに2年間勤務しました。
今は全く違う分野を、一から取り組んでいます。この話は機会があれば別途...。
ロンドンにいた頃は、アートが自然と深く、生活に根付いているのを感じていたけれど
日本では、一部人達の特殊な世界、と見られがち。
いつか、日本でも、もっと生活にアートが根付く世の中の仕組みづくりを
考えて、実行していきたいな、と思っています。
このブログは、そんな思いを元に
まずは、行った場所やたまに考えた事を、備忘録的に書いていこうと思います。
なんせ、本当は思った事を発信するのが苦手なので、まずは「書いてみる」事をしようかな、と。皆さま、お手柔らかにお願いします☆
では、次回からアート、本や映画について、
思いつくままに書いてみます。どうぞよろしくお願いします♪