美術のキュレーションと、情報のキュレーション
最近、Webの「キュレーションメディア」が流行っていますね。
「Gunosy」、「NewsPicks」、「NAVERまとめ」…
その他にも、食やインテリア、女性向けに特化したメディア等もあり、その市場は今
2014年には178億6000万、といわれる程に伸びているらしいです。(引用:Internet watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20140704_656589.html
正直、美術業界に関わった者としては
NAVERまとめも「キュレーター」とかっこよく称しているけど
ただまとめているだけ!だし、題名だけキャッチーで中身がくだらない記事も多いし、宣伝の要素も強いし
これを「キュレーション」と呼んで欲しくないなー、というのが、最初の感想でした。
2011年に佐々木俊尚さんの、『キュレーションの時代「つながり」の情報革命が始まる』が巷で噂になった時も、IT業界で何が起こるのかあまりピンと来ていませんでした。
キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
- 作者: 佐々木俊尚
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/02/09
- メディア: 新書
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今ではすっかり、キュレーションメディアから配信されるニュースを
楽しみに読んでいます... 笑
私が「キュレーション」という言葉、「キュレーター」という職種を知ったのは
8-9年前、美術業界で働きたいな~と漠然と考えていた頃。
”美術館”という空間に縛られずに、インディペンドで展覧会を企画したり、プロジェクトを担うのってどういう人達なのかなぁ、と調べていたら
「キュレーター」と呼ばれる、れっきとした職業があるのを知りました。
私が留学をした、ロンドンのGoldsmiths大学にもMFA in Curating(修士:キュレーションコース)というのがあり、世界中から将来の美術界・大物キュレーターを目指す若手が集まってきます。(ちなみに私は、Goldsmiths大学ではDiplomaコース、Contemporary Art Historyを修得しました。)
Royal College of Art、というロンドンにあるアートの名門校では
キュレーションコースを受講する為には、年間数百万(イギリス人以外)も支払い、修士2年目はほぼ自力で論文やプロジェクトをこなすという内容であるからにも関わらず、大変人気があります。
美術業界で「キュレーター」になる、という事は、美術史や作品の知識から、展示の企画、執筆、空間の構成、資金調達保存やアーティストとの交流まで、幅広く、知力共に手腕の問われる職に就く事です。
Goldsmithsのキュレーティングコースを卒業した友達は、大体母国へ返って、自分でプロジェクトを立ち上げています。
ビジネスのMBAと同じく「勉強して、で、何ができるの?」と問われる世界で
専門知識のみならず、総合的なプロデュース力までが必要とされる
高度な専門職だと思っています。
美術のキュレーションは、「物」と人間、空間との関わり合いや
音、におい、緊張感といった人間の五感に訴える3次元の世界まで組み立てるのに対し、
情報のキュレーションは、大量の情報を一定の基準で交通整理し
”集約による時間の短縮”、”他者との共有”、という現代のニーズを満たす
全く新しいものになっている気がしています。
現に、矢野経済研究所では、キュレーションサービスを下記の様に定義している様です。
「キュレーションサービスとは、目的や意図を持って情報収集して、そこから不要なものを切り捨てて、人々の関心・興味を新たに喚起する形式で、情報を集約化し他者と共有するサービスをさす。」
http://www.yano.co.jp/press/press.php/001264
もちろん、美術業界でも誰でも「キュレーター」を名乗れます。
ただ、ある意味、誰もが色んな切り口で「キュレーター」を名乗る様になった今...
やはりその中でも、「意義のある文脈をきちんと造りだせる」ものが
長く支持され、残っていくのかな、と何となく思っています。